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ぶっとび

 

 ボヘミアンたるものクリスマスイヴを友人や恋人と楽しく過ごすことなどあってはならない。我々
は大衆に迎合することなく聖夜を見知らぬ土地で過ごし、新たな精神世界へと登らなくてはならない
のである。そのための企画が本項で紹介する「ぶっとび」である。
 2013年12月21日明朝5時。5人のボヘミアンがボヘハウスに集められた。ぶっとびにおいて参加
者は当日まで目的地を知ることはない。この日ボヘハウスには様々なスイッチが仕掛けられており、
それらを踏んだボヘミアンから順に日本各地にぶっとばされていく。移動方法は特に指定されていな
いが、目的地に着いた証拠となる写真を撮ってこなければならない。まずは今回踏まれていったス
イッチを紹介しよう
と思う。
 
  薛→「いち」と言ったので岩手県一戸氏
 中村→「寒い」と言ったので山形県寒河江市
 山口→腕を組んだからおやま遊園地
 甲斐→
 高橋→ゴミを捨てたから夢の島
 午前5時過ぎ、私はボヘハを発ち山形へと向かった。京都駅で青春18きっぷを購入し、鈍行を乗り
継いで山形県に辿り着いたのは翌日のことだった。この一人旅をするにあたって何より苦労するのは
宿を探すことである。たいていは金銭的な面からマンガ喫茶等で夜を明かすのであるが、山形県とな
るとそうはいかない。実際私が寒河江駅に到着したのは22日の夜9時であり、あたりにはマンガ喫茶
はおろかビジネスホテルも見当たらなかった。終電はもうなく、もともと当たりをつけていた駅から
徒歩15分程度の24時間営業の満喫はすでに営業停止してさら地になっており、次に近い宿泊地まで
20キロ以上歩かなければならないという絶望的な状況であった。結果的にその日は寒河江駅のベンチ
で野宿したのだけれど、本当に死ぬかと思った。
 よく一人旅をして「視野が広がった」とか「人生観が変わった」などとfacebookやtwitterに書く
いけ好かない大学生がいるが、この旅はそんなものを目的としているわけではない。これは現実から
の逃避であり、何か高尚なものと履き違えてはならないのである。目的地と日時を縛られ出発し、極
寒の地で野宿をし、24日に呼んだデリヘル嬢に人生についての説教を聞き、うまい飯を食って帰るこ
とで真のボヘミアンとなれるのではないだろか。 

文責:中村

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