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鶏殺〜る

 

4 月のある晴れた風の強い日、俺は鴨川デルタでぼんやり景色を眺めていた。花見やら新歓やらでワイワイ騒ぎの連中を見ながらただひたすら1人ですごす。2回 生になるのにサークルが定まらない。入ってみたのはいいが、どこもすったもんだして結局関係が途切れた。半ば諦めと超然の混じった気持ちで騒ぐ人々を見続 ける。

デルタの三角形、下段のあたりで飛び石をわたる親子連れやカップルを見ている俺。後ろではなぜか2羽のニワトリが繋がれている。・・・スルー。いろいろ人間のわけのわからない部分を見てきた俺だ、別に少々の不条理くらいかわせるぜ。 だが俺はお人好しだった。春風でそばにあった青いシートが飛ばされ、端を押さえていた酒ビンが倒れる。俺はビンを戻すと、そのサークル のメンバーらしき人がやってきた。「すみませーん」そうそれが俺とおにいちゃん(渡辺)との出会いであった。そして二人はめくるめく男子ワールドに突入し ない。 手についた酒がものすごく涼しい。度数がかなり高いらしい。話によると鳥を殺して食うようだ。なんて奴ら!

このパーティーな雰囲気の中 鳥の後悔処刑とはなんと残酷でいやらしくて・・・魅力的なんだろう。メンバーは首を切ることを俺にすすめてきたがさすがに断った。ニワトリは暴れる様子も なく落ち着いている。 彼らは鉈を取り出してさっきの酒を刃につけた。あの酒は消毒用らしい。青いシートに鶏1羽を入れ、周囲を人間で囲い鉈で鶏の首に叩き切 るような一撃を加えた。ゴキッと鶏の首が曲がり、血が滴りだす。全然切れてない。繰り返し首にチョップをぶつけるメンバー。どうせなら一撃で逝かせてやり たいものだ。どこまでこの鶏は生きているものなのだろう。最初の一撃で死んだのかもしれない。 こうして一羽目を始末し羽根をもいでいると警察官らしき人が現れ撤収するよう言ってきた。ああ、なるほど、このサークルはやりたい放題なのね。なにはなくとも実行してしまう恐ろしいところのようだ。

京大キャンパスに移動してもう一匹を殺し、焼いて食べた。モモ肉は硬くて、羽根の残りがついているような気がした。こうして俺はこのボヘミアンにとりこまれた。いつ入部したともわからないし、新歓イベントも知らなかった。妙なところで縁があるというのもいいかもしれない。 文責:鈴木洋介

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